余部鉄橋を想う。
すべての始まり...
最初は、一目でいいから見たかった。
そんな軽い気持ちが甘かった。
一瞬の出会い
朝7時の余部を、轟音を響かせてわたる出雲に憧れた。
2階建ての家が、これでもかと言うほどに小さく見える。
とにかく目立つ存在。
真夏の午後
少年たちは鉄橋を渡る列車に見向きもせず、ひたすら野球を続けていた。
自然に囲まれた余部の町に、一瞬だけ大きな音が響き渡る。
波の音にも負けず。
真夏日和
自由気ままに咲き乱れる花。いつまでもこんな日々が続いて欲しかった。
夕暮れ時。
観光客を満載した列車が帰ってゆく。
余部の夜は暗い。
暗くてもはっきり感じる奴の存在。
里の秋
いさり火
リアルに石油高騰の被害を受けたのか、所狭しと並ぶ漁船が見えない。
新年早々、お立ち台はやっぱり人気
出雲無き今、奇跡的に生き残るはまかぜは人気の的。今年はとうとう工事が始まる。
夜の明けきらない3月の朝
何時もと変わらずはまかぜが静寂を破る。
夏の日差しを感じる5月。
新緑の余部は新鮮だった。
そう、この時はまだ何も始まってはいなかった。
どこから見ても。
時が止まってほしかった...
観光客の安全を守るべく、警備員が居た。
一日に10分。
それが約束の時間。
いつもと何も変わらないのです。
カメラマンが少し多いこと以外。
今日も終わり。
工事が始まる前に。
最後に会えてよかった。
変化。
それでも列車は走る。
まだ鉄橋は生きている
青い空、赤い鉄橋。
青い橋、白いフェンス。
何かが少しずつ変わってきた。
鉄橋が生きている証拠。国鉄時代からの気動車のエースもまだ生きている。
この町に邪魔なものはない。
そんなもの必要ない。幸せの瞬間。
特別な日
少し変わった余部鉄橋も、こうして見れば健在。
やっぱり夕暮れが好き。
臨時列車、あまるべロマン号。
老舗特急が、あの小さな駅に停まった。
光る警報
こうして列車が何本も止まってきた。
雲ひとつ無い空。
臨時列車がゆっくりと渡っていった。
真っ青な海と空。真っ赤な鉄橋と列車。それ以外何もいらない。
赤い列車が赤い鉄橋を駆け抜ける。
それが余部。
大空に向ってどんと構える君がカッコよかった。
微動だにしない、赤いトレッスル。
それでも、鉄橋の周りでは少しずつ工事の始まりが告げられていた。
終わりへのカウントダウンも開始。
クレーンと勝負するのはもうすぐ。勝つのはお前。
5分の辛い道のりがここから始まる。
魔の手は駅にまで達した。
見慣れた家が消えた。ウソだよね。
長いのか短いのか。今年もそろそろ終わりを告げる12月30日。
やっと貰えた
空からの白い贈り物。
いつまでも消えないで。
永遠に消えることの無い、記憶の中の君。
時には少し邪魔だったり。
この町には、こんな小さな飾りもしっかりと存在する。
さりげなく、それでもしっかりと。
何回お世話になっただろう。
何人お世話になっただろう。
忘れない君の笑顔。
緑の異物が混在。
それでも隠れたつもりか?
この町にお前は必要ない。
ほっとする瞬間。
もう補修されることはないのだろうか。
何を思って泣いたのだろう・・・。
この道も、もう二度と歩けない。
さよならは言えたのだろうか。ヘトヘトになりながら6往復したのも良い想い出。
そろそろ現実を受け止めて。
錆びかけた脚がそう語った。
魔の手は容赦ない
・・・
記憶の世界へ。
案内看板がウソをつく場所です。 |
すべてが徹底的に破壊されていく。
少し背伸びして大きくなった新橋梁の柱枠。
それでも共にまだまだ生きています。
蒸気機関車も、国鉄特急、出雲、ロマン号も走ったこの道。
誰もが知ってるこの場所。それぞれの思い出を、絶対忘れないでください。
役割を終えた案内標識。
また会いに来ます。